第12回 賃貸借の存続期間と敷金の規定について
前回のコラムでは,2020年(平成32年)までに施行が予定されている改正民法(債権法)による不動産賃貸借契約や不動産売買契約などへの影響のなかでも最も重要な改正である,保証人に関する改正について解説しました。保証人に関する改正は,新設される規定も多く,重要な改正点が多いことは前回も解説したとおりです。

 今回のコラムでは,賃貸借の存続期間と敷金の規定について解説していきたいと思います。

賃貸借契約の期間

 現行民法では,賃貸借の存続期間は20年を超えることができない,更新期間も更新時から20年を超えることはできないとされています(民法604条)。

 とはいえ,借地借家法の適用がある建物の賃貸借契約については,民法604条の規定は建物の賃貸借には適用されず(借地借家法29条2項),賃貸借期間の上限はありません。

 また,建物所有を目的とした土地賃貸借契約についても,借地権の存続期間は30年とされ,契約でこれより長い期間を定めることもできます(借地借家法3条)。

 

改正民法

 改正民法では,賃貸借の存続期間は最長で50年間とされました(改正民法604条)。

 上記のとおり,借地借家法で賃貸借契約の存続期間について上限を排除しているにもかかわらず,改正民法であえて賃貸借の存続期間を最長で50年間としたのはなぜでしょうか。

 最近では土地の有効活用方法の一つとして,太陽光発電のパネルを設置するゴルフ場など、レジャー施設を運営するために土地の賃貸借をすることが考えられます。このようなケースでは,建物の所有を目的としていない賃貸借であるため借地借家法が適用されず,民法の原則とおり、賃貸借の存続期間は20年が上限となります。しかし,太陽光発電パネルのような大規模な設備を設置させるには、20年より長い存続期間が必要となります。
 そこで,改正民法ではこのようなニーズに応えるため,賃貸借の存続期間を最長50年間としました。

 このように考えると,賃貸借の存続期間の上限を50年とはせずに,撤廃しても良いのではないかと思われます。しかし,賃貸借の存続期間を無制限としてしまうと,いつまでも賃貸借契約の期間が満了しない状態になり、賃貸人にも賃借人にも酷であることから,上限を撤廃せず、永小作権の上限が50年であることにあわせて,賃貸借の存続期間も20年から50年に延ばしたものです。

 

敷金の定義

 これまで敷金の定義については、明文で定められていませんでした。

 改正民法では敷金の定義規定が設けられ,敷金とは,「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で,賃借人が賃貸人に交付する金銭」(改正民法622条の2第1項)のことをいうと規定されました。

 名目が「保証金」,「預り金」であっても,賃貸借契約で生じる家賃その他の賃借人の賃貸人に対する債務を担保する目的で預けられた金銭は、すべて「敷金」になります。

 では,賃料を滞納している賃借人から、預けている敷金を滞納賃料に充当するように請求することはできるでしょうか。

 この点については賃貸借契約書において,賃借人からの敷金の滞納賃料への充当はできない旨の条項が含まれているのが一般的でしたが,改正民法では、賃借人から賃貸物件の明渡前に敷金の滞納賃料への充当は請求できない、と明文化されました(622条の2第2項)。

 

敷金の返還時期

 敷金の返還時期についてもこれまで明文の規定はなく,判例上,賃貸借契約が終了し,かつ賃貸物件の明渡が終了したときと解されていました。

 改正民法では,敷金の返還時期について、これまでの解釈を明文化するとともに,返還の範囲についても敷金から未払い家賃その他の賃借人の債務を控除した残額と規定されました(改正民法622条の2第1項1号)。

 

敷引特約の有効性

 敷金を返還する際に一定額を控除したうえで返還する旨の,いわゆる敷引特約は有効でしょうか。

 この点,敷金の返還時期,返還の範囲に関する改正民法の規定は,強行規定ではなく任意規定と考えられています。つまり,賃貸人と賃借人との合意があれば、改正民法の規定と異なる合意をすることは可能です。 

 そのため,賃借人である事業者との間で賃貸借契約を締結する際に,敷引特約を設けることは有効と考えられます。
 もっとも,消費者である個人との間で居住用建物の賃貸借契約を締結する際に敷引特約を設けることは,特約の内容によっては消費者に一方的に不利な内容を課したとして、消費者契約法によって無効となるおそれがありますので注意が必要です。
 

 不動産賃貸借における賃貸借契約の存続期間,敷金に関する主な改正点について解説してまいりました。
 今回の改正はこれまでの理解を明文化した規定が多いのが特徴ですが,借地借家法の適用のない賃貸借契約など土地の有効活用に有利な改正があります。土地を活用した長期事業の展開をお考えの方は、検討されてみるとよいかもしれません。

                 以上

この記事を書いた人

吉山 晋市(よしやま しんいち) 弁護士法人みお綜合法律事務所 弁護士
大阪府生まれ 関西大学法学部卒業
弁護士・司法書士・社会保険労務士・行政書士が在籍する綜合法律事務所で,企業法務,不動産,離婚・相続,交通事故などの分野に重点的に取り組んでいる。

弁護士 吉山 晋市

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