第14回 民法改正の影響 ~不動産売買契約における契約不適合責任について~
 前回のコラムでは,2020年(平成32年)までに施行が予定されている改正民法(債権法)による不動産賃貸借契約について,賃貸物件の修繕について賃貸人の義務,賃借人の権利,原状回復義務の明文化規定について解説しました。
 今回のコラムでは,不動産売買契約における民法改正の影響として,契約不適合責任について解説していきたいと思います。

 

契約不適合責任とは

 物(目的物)に関する担保責任に関して,現行民法では,瑕疵担保責任(民法570条、566条)と数量不足・一部滅失(民法565条)とに分けて規定されていました。

 売主の瑕疵担保責任について,目的物に「隠れた瑕疵」があった場合,買主がこれを知らず,かつ,契約の目的を達することができないときに契約の解除ができる,解除ができないときは損害賠償請求ができるとされていました。

 不動産のように,この世にひとつしかないもの(特定物)は,売主が買主に引き渡しさえすれば契約は履行されたといえ,債務不履行責任は生じないと考えられます(いわゆる「特定物ドグマ」)。

しかし,目的物に隠れた瑕疵があって,あとから瑕疵が判明したような場合には,代金の決め方や額そのものが変わったかもしれませんし,契約の目的を達することができなかったかもしれません。

 そこで売主は、債務不履行責任は負わないとしても,買主の信頼を保護するために故意や過失がなくても瑕疵担保責任を負わなければならないという,法定責任説が採られていました。

 

 ところが,今回の民法改正で,この法定責任説から,担保責任の性格を債務不履行の特則と考える,契約責任説(債務不履行責任説)へ大きくルールが変更されました。

 

 すなわち,改正民法562条1項では,

 「引き渡された目的物が種類,品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは」というように、契約不適合責任という概念が採用されました。

これは,目的物が特定物か不特定物かで区別せず,目的物が契約内容に適合していないことに対する責任を認めたものです。

このように,法定責任説から契約責任説へ大幅な転換が図られた結果,買主保護の手段についても大きく変更されることになりました。

 

特定物売買における現行民法の瑕疵担保責任と、改正民法の契約不適合責任とを比較すると、以下の表のとおりになります。

 

 

現行民法

改正民法

法的性質

法定責任説

契約責任説

対象

隠れた瑕疵

(570条)

種類,品質又は数量に関して契約の内容に適合しないもの

(改正562条1項)

解除

契約の目的を達成できない場合に限定される

相当の期間を定めた催告の上,解除できる

ただし,不履行が社会通念に照らして軽微な場合は解除できない

(改正564条,改正541条)

損害賠償請求

売主に故意・過失がなくても請求できる

売主の帰責事由が必要

追完請求

請求できない

請求できる

ただし,買主の責めに帰すべき事由があるときは請求できない

(改正562条)

代金減額請求

請求できない(数量指示売買をのぞく)

履行追完の催告の上,追完がないときは減額請求できる
(改正563条1項)

期間制限

買主が瑕疵の存在を知ってから1年以内(除斥期間、570条、566条3項)

買主が不適合を知ってから1年以内に不適合の事実を通知する

(改正566条)

 

 

不動産売買における契約不適合責任について

①「契約の内容」に適合するか適合しないかの判断は?

 現行民法の「隠れた瑕疵」から改正民法の「契約不適合責任」に変更した趣旨は,瑕疵の有無を客観的に判断するのみならず,契約をした動機や目的など契約の趣旨を踏まえて判断しようというものです。なお,民法改正の経過においても「契約の趣旨」という文言が採用されていました(中間試案54頁)。

 したがって,契約の内容に適合するかどうかの判断については,これらの契約の目的や動機も含まれるように売買契約書や重要事項説明書に明記しておくことが必要と思われます。

 

②不動産売買における追完請求の内容は?

 現行民法では不動産の売買で契約当時から雨漏りがあったとしても、買主は売主に対して修補請求はできませんでした。

 ところが,改正民法で不動産売買においても,買主の追完請求権が認められたので,その分,売主の負担は大きくなったといえます。

 そこで,不動産売買契約においては,買主による追完請求権を行使する際の追完方法,追完の範囲についてあらかじめ売買契約書において具体的に定めておくことが必要になると思われます。

 

③不動産売買における代金減額請求の方法は?

 改正民法で,買主は,相当の期間を定めて履行の追完を催告し,その期間内に履行の追完がないときは,不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができることになりました(改正民法563条1項)。

 もっとも,代金をいくら減額すべきなのか,具体的方法までは規定されていません。

 そのため,代金減額請求をするとき,減額請求をされたとき,適切な減額かどうかが争いになることが予想されます。

 したがって,減額の算定方法に争いが生じないように,売買契約書で減額の算定方法や算定基準について明記して多くことが必要と思われます。

 

 今回は不動産売買における契約不適合責任について解説してまいりました。

今回の改正は,これまでの通説であった法定責任説からの大幅な転換を図り,買主保護の手段についても解除,損害賠償以外にも追完請求,代金減額請求など多様化しています。

不動産売買におけるトラブルを予防し,不測の損害が発生することを防ぐためにも,改正民法の内容を踏まえた不動産売買契約書の見直しが必要になりますので注意が必要です。

この記事を書いた人

吉山 晋市(よしやま しんいち) 弁護士法人みお綜合法律事務所 弁護士
大阪府生まれ 関西大学法学部卒業
弁護士・司法書士・社会保険労務士・行政書士が在籍する綜合法律事務所で,企業法務,不動産,離婚・相続,交通事故などの分野に重点的に取り組んでいる。

弁護士 吉山 晋市

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