第5回 不動産を購入する際の注意点
「衣・食・住」というように「住まい」は人生と切っても切れない関係にあります。このコラムでは,人生の様々な場面での「住まい」いわゆる不動産に関する法律問題について解説していきたいと思います。

前回のコラムでは,不動産を売却する際の注意点についてお話をしました。今回のコラムでは,売主の立場とは反対の,買主の立場,すなわち不動産(とりわけ中古不動産)を購入する際の注意点について解説していきたいと思います。

「人生で一番高い買い物」といわれる不動産の購入。一生に何度も不動産を購入することはあまりないでしょう。不動産の購入は初めてという方がほとんどと思います。高価な買い物だけに慎重にならざるをえません。そこで,中古不動産を購入する際の流れに沿って注意点をみていきましょう。


① 物件を探す
高価な買い物だけに行き当たりばったりで不動産を購入する人はいませんよね。週末の新聞折り込みチラシやインターネットで不動産販売会社の広告を見たり,直接不動産販売店を訪れて希望の立地,間取り,予算で候補を探してもらうことからはじまります。


② 現地案内
 広告に記載された物件,不動産販売店で候補として勧められた物件があれば,実際に現地で物件の状況を確認します。
 中古不動産の場合には所有者がまだ居住中のこともあるので,騒音などの周囲の環境,近隣との関係など気になることがあれば直接お話を聞いてみることも購入の是非を判断する材料になるでしょう。
 また,時間帯や曜日によって周囲の環境が変化することもあります。購入して実際に住み始めてから「こんなはずじゃなかった」というトラブルは意外に多いものです。トラブルを未然に防止するためにも時間帯や曜日をずらして何度か近隣の様子を確認しておくこともお勧めします。


③ 重要事項説明書
現地案内も終えて購入を決断されたら,売買契約です。
しかし,不動産の購入は高価な買い物です。契約してから「そんな話は聞いてない!」というようなトラブルも起きかねません。そこで,不動産の売買契約の前に「重要事項説明書」というものが大切な役割を担います。「重要事項説明書」は,売買の対象となる不動産に関するもの,売買契約に関するものの重要な事柄について記載されており,これを不動産売買仲介業者の宅地建物取引士という資格をもった人が読み上げて説明をします。このとき,現地案内で確認した内容と異なる点や気になる点があれば,必ず質問して疑問や不安を解消しておくことが必要です。一般的には不動産売買契約書の締結の前に重要事項の説明があります。事前に重要事項説明書をもらっておいて,買主自身で読み込んでおいたほうがよいでしょう。


④ 不動産売買契約書
重要事項の説明も受けて対象物件,取引条件などについて確認ができたら,いよいよ不動産売買契約書にサインをすることになります。
以下は,不動産売買契約書において注意すべき点をあげています。
売買代金,手付金の金額が記載されていますので,間違いがないか注意しましょう。
不動産売買において,一般的には手付解除を設けることが多いです。手付解除とは,買主は自分が払った手付金(不動産売買代金の20パーセントとすることが多いです。)を放棄すれば解除できる,売主はもらった手付金の倍額を払えば解除できる,というものです。高価な買い物だけに,望まなくなった契約に拘束するのではなく,手付金の放棄または倍額の支払いによって,解除できる余地を残すものです。
また,不動産売買においては多くの買主が住宅ローンを利用します。万が一,買主の住宅ローンの審査が通らなかった場合にはどのようにすればいいのでしょう。買主の住宅ローンの審査が通るか不明な場合には,審査が通らなかったら、手付金を放棄する手附解除でなくとも買主は無条件に解除できるという「ローン特約」を設けることができます。もし,住宅ローンの審査に不安がある場合には,仲介業者に「ローン特約」をつけてもらったほうがよいでしょう。


⑤ 現状有姿
不動産売買契約書において,現状有姿特約がもうけられることがあります。現状有姿特約とは,売買契約時の不動産のあるがままの状態で引き渡しをすることを意味します。
では,前回のコラムで解説しました売主の義務のひとつである瑕疵担保責任との関係はどうなるのでしょうか。つまり,買主は現状有姿特約があれば売主の瑕疵担保責任を追及できなくなるのでしょうか。
 この点,現状有姿特約があったとしても,外部からは判断しにくい瑕疵、すなわち隠れた瑕疵があった場合には買主は売主の瑕疵担保責任を追及できると思われます。
もっとも,対象不動産の築年数などから売買代金を相場に比較して低くすることとの兼ね合いで,瑕疵担保責任を免除することもあります。この場合には,買主は売主の瑕疵担保責任を追及することはできなくなるので注意が必要です。


⑥ 競売物件の購入
 中古不動産の中でも,競売物件を競落して購入することが考えられます。
もっとも,競売物件の購入においては一般の不動産販売のような,現地案内もありませんし,売主に対する瑕疵担保責任の追及もできませんので,より注意が必要です。
競売物件の情報を収集するには,裁判所が作成する,現況調査報告書や物件明細書によるほかありません。しかし,これらの書類によっても,実際の権利関係を保証するものではないので注意が必要です。
実際にあった事例ですが,競売物件であった土地建物の正面入り口はXさん所有の私道に面しており,建物から公道に出るためには建物裏側の勝手口から出るか,Xさん所有の私道を通行する必要がある建物をYさんが競落しました。この土地建物が競売にかけられる以前は,建物所有者とXさんが私道を通行する権利,地役権を設定していました。物件明細書には,Xさんの私道を通行して利用していたという趣旨のことが記載されていたので,競落したYさんはXさんの私道を引き続き通行できると思い込み,この土地建物を競落していたのでした。
ところが,通行地役権は当事者間の契約によって設定されているので,Xさんと競落したYさんとの間で通行地役権が承継されません。
Yさんは,Xさんに無償の囲繞地通行権(いにょうちつうこうけん,民法210条)を主張できるとして訴訟提起しましたが,裁判所は,Yさんが競落した土地が袋地になった経緯,従前の通路,現在の通路,各土地の地形的,位置的状況などから,Yさんの無償の囲繞地通行権は認めませんでした。
結果的には,Yさんは,建物を利用する上でXさんの土地を通行して公道に出るのが最も簡便であったことから,Xさんと話し合いを重ねて有償で地役権を設定する契約を結びました。

このように競売物件を競落するときは十分権利関係について調査することが必要ですし,現在の権利関係を判断するには過去の古い公図が役立つこともあります。

 

高価な買い物である不動産の購入。後悔しないためにも買主自身で必要な知識をもって自分の目で確かめて契約することが大切ですね。
以上

 

この記事を書いた人

吉山 晋市(よしやま しんいち) 弁護士法人みお綜合法律事務所 弁護士
大阪府生まれ 関西大学法学部卒業
弁護士・司法書士・社会保険労務士・行政書士が在籍する綜合法律事務所で,企業法務,不動産,離婚・相続,交通事故などの分野に重点的に取り組んでいる。

弁護士 吉山 晋市

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