持ち家購入と賃貸で迷ったときの判断方法
昨今は“マイホーム神話”という言葉をあまり耳にしなくなりました。実際に、「家族が増えたからマイホーム」「家賃払い続けるのがもったいないからマイホーム」などという考えが広まっていた一昔前よりも、持ち家比率は低下しています。
年齢別に見る持ち家比率の変化(1988年・2013年比較)
(総務省統計局「昭和63年住宅統計調査」「平成25年住宅・土地統計調査」より作成)
特に若い世代での持ち家比率が低下しています。
持ち家と賃貸のメリットとデメリット比較
一般的に言われている両者のメリットとデメリットは以下の通りです。
また、持ち家の方が賃貸よりも広い分光熱費がかかると言われることもありますが、昨今は戸建でもマンションでも高気密・高断熱な住居が増えているため必ずしもそうとは限りません。むしろ、賃貸から分譲住宅に引っ越して、光熱費が下がったという話もよく聞きます。また、最近では賃貸でも分譲並みの設備を取り入れたり、個人ではまだ普及率の低いホームセキュリティサービスが付帯された物件があったりと、賃貸物件のレベルも上がってきています。こういった点を考えても、良し悪しを一概には言えない状況です。
ライフプランをしっかり考えて
子どもが出来たからといって必ずしも持ち家がいいとは限りません。多額の住宅ローンを組むことによって教育費を圧迫してしまうことや、共働き世帯の場合、待機児童の多いエリアに住まいを設けてしまい退職を余儀なくされることなどが最悪のケースとして考えられるからです。
ここに、ある家族のライフプランをあげてみます。(一例です)
親が働き盛りで子どもが小さい時は、できるだけ職場に近い場所に住むことで、遅くまで残業してもすぐに帰宅でき、また、少しでも長く子どもと過ごす時間を確保することが出来ます。そんな条件のいい物件は購入するより借りる方がハードルは低いのではないでしょうか?また、子どもが独立したあとは部屋も余るので、いっそのこと夫婦でコンパクトに暮らしたいと考える人は売却して住み替えることも考えられます。そうなると、価値の下がりにくい物件を選ぶ必要があります。
「教育環境がいい○○学校の学区で育てたい」「子供が独立した後は、郊外でのびのびと暮らしたい」など、“誰と”“どこで”“どのように”暮らしたいかという将来へのビジョンをしっかり持つことは、持ち家か賃貸かを考える際に非常に重要になります。
結局はあなたの価値観次第
「縛られるのが嫌だから賃貸で自由に」「持ち家というステータスがやはり欲しい」など、住居に対する価値観は人それぞれです。しかしほとんどの方が、できれば自分で所有する家を持ちたいと思うことでしょう。それぞれのメリットとデメリットを把握し、ライフプランを加味した上で、最後にはみなさまの価値観にしたがって持ち家か賃貸かの結論を出すといいと思います。
この記事を書いた人
吉崎 誠二
不動産エコノミスト
社団法人 住宅・不動産研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了
立教大学大学院 博士前期課程修了
株式会社船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate
ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者 等を経て 現職。
不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
公式サイト http://yoshizakiseiji.com/
社団法人 住宅・不動産総合研究所 http://www.hr-i.jp/
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