路線価発表
7月3日に国税庁が路線価を発表しました。全国平均路線価は前年比0.4%のプラス、2年連続の上昇となりました。しかし、都道府県別にみると下落が続くところもあり、二極化が広がっています。兵庫県の平均値における対前年変動率はマイナス0.3ポイントでしたが、一方、県内最高価格の三宮センター街の路線価は上昇が続いています。
■三宮センター街の路線価推移
千円/㎡
(国税庁「H29年路線価」をもとに作成)
一物四価とは?
土地の価格は「一物四価」と言われ、それぞれの目的に応じた目安となる価格が複数つけられています。四価とは、「実勢価格」、「公示地価」、「相続税路線価」、「固定資産税評価額」のことです。基準日や所管は以下の通りです。
■土地の一物四価
実勢価格とは、いわゆる「時価」で、市場において実際に取引される価格を指し、売主と買主の交渉で決まります。
公示地価は、地価公示法に基づいて、毎年1月1日において、標準地を選定して「正常な価格」を判定し公示するものです。 実勢価格の90%が目安となります。なお、地価公示法では、一般の土地の取引は公示地価を指標とするよう努めなければならないとされています。
次に、固定資産税評価額は、固定資産税や不動産取得税、登録免許税など不動産関連の税金の計算の基準となる価格です。毎年ではなく、3年に1度、価格が見直されます。目安としては、公示地価の70%と言われています。
最後に、今回のテーマである路線価は、相続税および贈与税の算定基準となる土地評価額で、公示地価の8割程度が目安となっています。相続税路線価は、土地全体の価格を示すのではなく、路線(道路) に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価格を示します。該当土地に接している道路に付いた価格に、土地の面積を掛け合わせることで、相続税を計算する際の評価額を求めることができます。
■一物四価のイメージ
注:価格の割合は目安です。
路線価を知ることの重要性
路線価は、その用途が相続税や贈与税などの基準であるため、あまり身近に感じられないかもしれませんが、実は、知りたい土地の実勢価格の目安を知ることが出来る有効な手段のひとつです。
先に挙げたように、公示地価は土地取引の指標となるのですが、実はすべてのエリアを網羅しているわけではありません。国土交通省が全国に定めた地点(標準地)を対象にしており、つまり、代表的な地点のみの価格なのです。ちなみに、H29年公示地価の標準地は、伊丹市では36地点でした。一方で、路線価は日本の多くのエリアをカバーしており、調べたい場所の価格をピンポイントで知ることが出来ます。
実勢価格 = 公示地価 ÷ 0.9
公示価格 = 路線価 ÷ 0.8
よって…
実勢価格 = (路線価 ÷ 0.8) ÷ 0.9
調べた路線価から、上記のようにして実勢価格の目安を算出することができます
(詳しくは、各行政機関の該当HPなどで必ずご確認ください。)。
路線価の算出方法
次に、路線価図の読み方を確認しておきましょう。
国税庁のHP(平成29年分財産評価基準)には、最新の路線価図が掲載されています。都道府県→市区町村→町字と順に進んでいくと、知りたい地域の路線価図が閲覧できます。
■路線価図の見方
※上記は、国税庁HP(http://www.rosenka.nta.go.jp/docs/ref_prc.pdf)を参考に、数字
等を説明用に変更し作成したものです。
次に、調べたい土地の路線価の算出方法です。例えば、一路線に面する自用地で以下のような土地の場合、以下のとおりの計算となります。※詳細は国税庁のHPなどを参考にしてください。
≪1㎡当たりの価額≫
115,000円×奥行価格補正率※:0.96 =110,400円
まず、1㎡あたりの価格は、路線価図記載の金額に、奥行価格補正率を掛けることで算出いたします。ここで出てくる奥行価格補正率とは、道路からの奥行の長さに応じて路線価を調整するための補正率のことで、国税庁HPに地区区分別、奥行距離別で一覧表が定められています。道路に一面にしか接していない宅地は、利用効率が悪いため評価が低くなります。
今回の例では、上記赤枠(左側)に従い「普通住宅地区」であり、例では奥行が35mですので、奥行価格補正率一覧表によりますと、奥行価格補正率は0.96になります。なお、奥行価格補正率の詳細は、国税庁HPを参照ください。
≪路線価≫
110,400円/㎡×700㎡=77,280,000円
先ほど算出した1㎡当たりの価格をもとに、調べたい場所の路線価を算出します。
上記は、シンプルな一路線に接する土地における路線価計算ですが、より複雑な地形の場合は、税理士や専門家の力が必要になる場合もありますが、おおよその目安は知ることが出来ます。
ぜひ、活用してみてください。
この記事を書いた人
吉崎 誠二
不動産エコノミスト
社団法人 住宅・不動産研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了
立教大学大学院 博士前期課程修了
株式会社船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate
ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者 等を経て 現職。
不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
公式サイト http://yoshizakiseiji.com/
社団法人 住宅・不動産総合研究所 http://www.hr-i.jp/
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