【どのタイミングで中古不動産を購入すればベストなのか?~購入時期を迷っている方へ~】
先日、住宅金融支援機構より「平成29年度における住宅市場動向について」(アンケートは平成29年2~3月に実施)が発表されました。これは一般消費者及びファイナンシャルプランナー、住宅事業者などに対して、今後の住宅市場に関してアンケート調査したもので、一般消費者では52.8%、ファイナンシャルプランナーでは67.2%が、今が住宅の「買い時」と捉えているようです。
調査結果を詳しく見ていきましょう。
平成29年度は買い時か?
■平成29年度は買い時か?
≪一般消費者≫ ≪ファイナンシャルプランナー≫
■買い時と思う要因(複数回答3つまで)
≪一般消費者≫
≪ファイナンシャルプランナー≫
※赤字表示は、前回調査比+10ポイント以上、青字表示は-10ポイント以下
(住宅金融支援機構「平成29年度における住宅市場動向について」より作成)
一般消費者、ファイナンシャルプランナーともに、『金利先高感』 『消費税増税』を理由に、今が買い時とみているようです。
ということで、この2点に関して購入価格にどの程度の影響があるのかを見ていきましょう。
低金利のうちに買うべきか?
昨今は低金利時代と言われています。
■フラット35の金利推移
★2008年2月~11月:公表なし
※1返済期間:21年以上35年以下、融資率9割以下
※2・~2008年1月:平均金利を採用
・2008年12月~:最多金利を採用
(住宅金融支援機構データより作成)
2017年5月のフラット35最多金利は、1.06%。2007年同月は、3.03%と10年間で1.07ポイントも下がっています。
3000万円をそれぞれの金利で35年間借入すると(元利均等、固定金利)、3.03%では毎月返済額は115,957円、総返済額は48,702,243円。1.06%だと、毎月85,527円で、35年間で総額35,921,186円を支払うことになります。つまり、総返済額で12,781,057円と大きな差が出ます。この差は非常に大きいと言えます。
増税前に買うべきか?
新築物件購入においては消費税がかかってきますが、中古物件の場合は、売主が個人ですと、消費税がかかりません。消費税は事業者が提供する商品やサービスに対して課税されるので、売主が個人である場合は、それに該当しないということです。ただ、売主が法人の場合や、仲介事業者へ支払う手数料には消費税がかかるので注意が必要です。また、業者から購入する新築物件や建築請負契約(注文住宅)では消費税がかかります。
個人から3000万円の中古物件を購入した場合、消費税が8%から10%に増税した際、どの程度費用負担が増えるのでしょうか。試算してみましょう。
やはり、個人売主の中古物件の場合は物件自体が非課税なので、増税の影響をそれ程受けないことが分かります。また、法人が売主の場合でも、一定の条件を満たせば「すまい給付金」を受けることが出来、消費税増税の負担が軽減されます。
ここで念のため、消費税増税のスケジュールを確認しておきます。
■2019年10月1日に8%→10%の予定
不動産を購入しやすい時期とは?
最後に、もっとスパンを短くとって1年のうちで月や季節によって不動産取引がどの程度変わってくるのかをみてみましょう。
次のグラフは2009年1月~2017年3月までの中古マンション契約数の月平均値をとってものです。
ここでは、月単位での傾向を見るために、最も契約件数の多い首都圏のデータで説明します。北海道や沖縄を除き、全国的に傾向は変わらないものと予想されます
■首都圏中古マンション契約件数の月平均
(件)
(公益財団法人 東日本不動産流通機構「月例マーケットウォッチ」データを基に、社団法人住宅・不動産総合研究所が作成)
やはり新入学、新学期、新社会人など新年度が始まる4月までに入居を希望する人が多いので、2月~3月の契約が多くなります。一方、8月の契約件数が比較的少ないですが、これはその気候が関係していると言われています。猛暑の中での物件選び、引越しとなると少し躊躇してしまうのも無理はないです。
この季節ごとの取引件数の差は契約価格に現れるのでしょうか?契約㎡単価の月平均を見てみましょう。(同じく2009年1月~2017年3月までの月の平均値)
■首都圏中古マンション契約金額の月平均
(万円)
★縦軸は万円、平米単価
(公益財団法人 東日本不動産流通機構「月例マーケットウォッチ」データを基に、社団法人住宅・不動産総合研究所が作成)
中古マンションは、特段、時期や季節によって契約価格に大きく差が出る訳ではないようです。
「買いたい時」が「買い時」と言える?
ここまで、いくつかのポイントで中古物件の買い時についてみてきましたが、これは「理屈にすぎない」と言えるかもしれません。
重要なのは、どんな家を選ぶかということ。高額な買い物、そして長い付き合いとなる住宅ですので、希望にあった物件に巡り合った時、それがまさに買い時だと思います。
よって、常日頃から物件情報を確認し、いざ物件が決まった時にすぐに走り出せるように資金計画をしっかり立てておきまましょう。
この記事を書いた人
吉崎 誠二
不動産エコノミスト
社団法人 住宅・不動産研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了
立教大学大学院 博士前期課程修了
株式会社船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate
ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者 等を経て 現職。
不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
公式サイト http://yoshizakiseiji.com/
社団法人 住宅・不動産総合研究所 http://www.hr-i.jp/
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